物凄く怖い話がある。
1988年に「世にも奇妙な物語」で放映されたドラマの一つに『懲役30日』がある。シリーズDVDにも収録されているだろう。これはどんな話か。ネタバレはする。
死刑制度が廃止されて5年が経った日本が舞台。ある男は、黄色いオープンカーに女を連れているところに多数の警察官に包囲され捕まる。男は7人もの人を殺害した犯人であった。反省の色を見せない男は弁護士に、終身刑の可能性が高いと伝えられる。「いっそうのこと死なせてもらったほうがいい」とは言うが「死刑」がないために死ぬまで刑務所で過ごすことになると聞くが、男はこれに反発し、弁護士を脅す。後に裁判所にて男への刑が言い渡される。それは「懲役30日」だという。男は思わず笑い声を上げる。反省する暇すらないといわんばかりに。
ここからが奇妙である。男は刑務所にある病院の一室のようなところへ連れて行かれ幾つかの身体検査を受けた後、白衣を着た男のいる部屋で寝かされる。時計の針は4時を指していた。体を固定され頭には脳波検査機を付けられて透明の液体が入った注射器で注射をされると眠りについた。
男が起きると、軍服を着た男に刑務所の牢に入れられる。
翌朝、軍服男に起こされ屋上へ連れられると錆付いた長い棒へ体を縛られる。「どうする気だ」というと「これがお前への刑だ。これから毎日、日が暮れるまでここで縛られながらずっと立っているんだ」と言われる。座れないようになっている。真夏日なのだろう、男の体力は消耗しきってしまう。別の日には日焼けした体に大量の塩を擦り込まれる。様々な苦痛を与えられるが、男は29日を耐え切る。30日目。男は地下室で電気椅子に座らせられる。軍服男に「これから君を処刑する」と言われる。しかし、死刑は法律で認められていないはずだと反論するが抵抗することもできず電気を流されてしまった。
途端に男は目を覚ました。病院のような一室で体を固定されたままである。男は死なずに助かったと同時に、30日の懲役を終えた安堵に浸っている。しかし開放してはもらえなかった。白衣の男は「まだ始まったばかりです。まだ5分しか経っていません」と言うのだ。時計の針は4時5分を指しており、先ほどまで居た刑務所の30日間は眠っている間に観た夢であった。男は5分間で30日(夢)の懲役を受ける事を知り、これが実際に30日もの間続けられるのだ。白衣の男にとっては30日間であるが男にとっては(1時間で夢にして1年、1日は24年、30日で)実に720年もの刑を受けていることになるのだ。
(720年が経った)ある日、女が黄色いオープンカーに跨って刑務所の前に誰かを待っていると、正門から男が千鳥足で出ていくところを見かける。しかし人違いであったのか、女はまだかまだかと正門の前をうろうろしているのだった。
非常に恐ろしい話だ。
どうでしょう。
話を分かりやすく話したつもりだが、分からなかったら観てみることをお勧めする。
ちなみに、デザインとはあまり関係がない。申し訳ない。
そこで、もう一つの話をする。
『5億年ボタン』を知っているだろうか。これについては様々な議論がされている。人によって解釈の仕方がちがうからだ。作者は菅原そうた によるCGを使った漫画である。
ストーリータイトルは「アルバイト」
2人の青年はある男にアルバイトの話を持ちかけられる。
・このボタン(へぇ~って鳴りそうな赤いボタン)を1度押すと100万円が手に入る。
・ボタンを押した瞬間からあなたはあなた以外に誰も何も無い空間に、実に5億年間居なければならなくなり、その間寝ることも、死ぬことも、老いることもないという。
・5億年が経つと、ボタンを押した瞬間に元通りになる。そして5億年を過ごした記憶はまっさら消える。
どうだ?押すかい?という話だ。
これはとてもよく出来た話だと思う。
ネット上では「押す人」「押さない人」との口論で満ちていた。
よく出来た話だけに考察が難しい。
(一度押すと5億年間過ごすことのリスクは大きすぎる。それで100万は安すぎる)
(5億年を過ごす間は地獄のように苦痛だが、終わると5億年に起きたことは無かったことになるからむしろお得だ)
(何も無い空間で5億年を過ごす記憶が無くなるのなら押す人は、5億年間拷問を受け続けるとなると、それでも押すのか)などいろいろな視点から考えが述べられていた。
記憶・物理的な証拠を無くすことが重要な点だろう。そうでなければ(周りから見れば)ボタンを押した瞬間に頭がおかしくなってしまう。それほど長い間(現実では一瞬もない)一人で過ごせば今まで居た所での記憶なんて忘れているだろうし、喋ることもできなくなってしまうだろうし、100万円なんてもうどうでもいいものになって、とてもじゃないが割りに合わなくなってしまう。例えば時給850円に設定されていて、5億年後に膨大な資金になっていたとしても、押せない。
記憶の有無は非常に大きい。
先ほどの「懲役30年」と考えを比べてみると面白いだろう。
5億年が無かった事になるのであれば押すかもしれない。ただ押すときが物凄く怖い。
なにせ押した瞬間に記憶が無くなるということは、5億年を過ごした記憶が無くなるという意味であって、押す前まで生きていた時の記憶(地球での記憶とする)が消えてそこから5億年過ごした後、記憶を無くす訳ではないからだ。
分かりにくい。つまり、後者は地球上で過ごしてきた自分とは(自分でありながら)全く別の人が5億年過ごしているようなもので、押した本人にはなんら影響は無いと思ってもいい。
何がいいたいかと言うと、地球上で過ごした記憶を引き継いだまま5億年過ごすことの苦痛さに、押すか迷ってしまうのだ。
むしろボタンの真上に手を置いて押すか押さないか、ストレスで脳死しそうだ。
押すとしかしその5億年は全く無かった事になり
「あ、ボタンを押したら100万円が出てきたわ、本当に貰っていいのこれ?」
となる。
皆は押す?100万円がポンと出てくるよ?
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